もっくんのブログ

生殺与奪の権を他人に握らせるな

2023年7月24日

丸太一本50年、かかった経費は分からない?

木材は、木の畑で育てています。
仕組みは農業や魚業と似ていますが、完成までに必要な年月が全く異なります。

農業、漁業の場合は、収穫まで半年~1年。
種蒔きや餌やり等をする「汗をかいた人」が、収穫までおこなって収益を得られます。

林業の場合は、もっと長い年月が必要です。
木材は種から苗になるまで2年、苗を植林してから成木になるまで50年かかります。
例えば20歳で植林し手入れしながら育てると、収穫時には70歳になっています。

農業は1年周期、林業は50年周期

70歳になって伐採作業ができるでしょうか?
急斜面を登り、重たくて大きな丸太を安全に切り出すことができるでしょうか?
現役バリバリの玄人だったら可能かもしれませんが、通常は後継ぎや委託に作業を頼むことになります。
その結果、「汗をかいた人」は収穫できません。収穫できないということは、利益を得られないということです。

木材が育つには何十年も必要です。
ひとつの木が何世代も跨いで継がれていくゆえに、値段を付けづらくなっています。

さて、値決めで必要な情報はなんでしょう。
原価と利益のふたつですね。
原価とは木材を作るのに必要な苗代、資材燃料費、人件費、固定資産税等のことです。
苗木代、草刈り代、燃料代、委託費と、木が育つには多額の費用が掛かります。
50年の間に掛かった原価は全て記録されているでしょうか?
“50年”ですよ。きっと難しいですよね。

木が育つのには多額の経費が掛かる

原価が分からないと、何円で売ったら利益を出せるのか分かりません。
確実に回収できる値段を付けたらいいのでは?と思われたかも知れませんが、高値を付けたら売れ残ります。

その理由は、木材市場は買い手優位の仕組みだからです。
「この木材なら〇〇円で買っちゃる」と買い手が値段を付けます。
銘木ならどんどん競り上がっていきますが、一般的な木材は「いかに安く買うか」で競っています。
商売ですから、できるだけ安く仕入れたい心理は悪いことではありません。
しかし、売り手からすれば赤字になるか黒字になるかの重要ポイントを、他人に握られている状態です。
某鬼を切る彼も「生殺与奪の権を他人に握らせるな」と言っていますよね。

丸太の値段=生殺与奪の権かもしれない

令和3年度のスギ丸太は16,100円/1㎥
木の伐採費と搬出費(原価)を払ったら、手元に残るのは微々たるものです。
苗木、植林、育てる経費(過去分の原価)まで考えたら大赤字です。
それでも売れ残るよりはマシだから、安値でも売るしかありません。

長い年月によって見えづらい原価と、買い手が値段を付ける仕組みによって、木材に適正価格が付けられないのが現状です。

今は、木材が適正価格で売買される仕組みを模索しているところです。

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